アークライズ ファンタジア公式ブログ

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Arcrise Archives(2)「水谷×御影 対談」ノーカット版(後編)

プロモーションチームの高島です。さて、いよいよ発売日ですね!

すっかりご無沙汰してしまったこの「Arcrise Archives(アークライズ・アーカイブズ)」発売当日にして第2回目となる今回のテーマは、第1回に引き続き「制作スタッフの情熱・マーベラスエンターテイメント水谷プロデューサー×イメージエポック御影制作プロデューサー対談」のノーカットバージョン後編、満を持しての公開です。

なお本日は、この公式ブログも発売を受けて更新ラッシュになる予感・・・!?
ゲームプレイの傍らに、リアルタイムでどうぞお付き合いください!

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3)押しつけでない「新しさ」で共感を

―― 『アークライズ ファンタジア』(以下ARF) のプロモーションでは、際立って個性的なシステムというのはそれほど強調されてませんね。

水谷 最近のゲームのなかには、新しさが言い訳になっているものもあると思います。「新しいから良い」という可能性はたしかにあるんだけど、求められてない新しさを、システムという名のもとに曲解して押しつけてしまう可能性もあると思います。そこはエンターテインメントの本質に立ち戻って、ユーザーが何を求めていているのかという接点に気がつかないと。ギミックはしょせんギミックでしかないんです。

今のユーザーは情報がすごくたくさんあって、昔と違い最初から直感でどういうゲームかわかるし、情報の取捨選択の基準が変わってきてる。従来のゲームでいうところの「なんとか合成システム」はさほど重要じゃないと思うんですよね。

御影 システムのうんちくを語りすぎるデメリットも確実にあると思いますよ。

―― 悩ましいところですね。ゲームの記事なのにシステムの説明がないのは、ゲームとしてどうなの? という迷いはあります。

御影 そこはキャラクターが21世紀で変わったように、ゲームのプロモーションも変わっていくべきだと思うんです。業界としてその壁をぶち破っていかないと、いろいろな商品が売れなくなってしまう。現代は情報と同じくらい、作品も多様なチャネルになってきています。『ARF』のインタビュー取材で感じるのは、みんなが口を揃えて「ほかのRPGと何が違うのか?」っていうことを探りあっている感じなんですね。

ネットも同じで、たとえばログレスは「召喚獣みたいなもの」、斬新なシステムって言っても○○○に近いよね、という感じで「~みたい」ってぜんぶ切り捨てられて終わってしまう。だからあえて、それは意味がないんじゃないかって。もっと言うと、システムのウンチクを語る人は、そもそも『ARF』には興味を持ってくれないと思います。

―― 「新しさ」と言う意味では、今回はシステムよりも「キャラクター」に集約しているわけですね。

御影 僕はいつも「誰にどんな作品を届けたいか」をキモに制作しているんですけど、今回はキャラクター、声優、シナリオ重視型RPG好きの3つのコンセプトに対応するユーザーのみなさんが、楽しめるように作ったつもりです。

水谷 『ARF』の場合は、「いまWiiでこんなゲームがやりたかったでしょ」って、真っ正面から言い切ることがいちばん大事なんじゃないかって思うんです。そのうえで「キャラのファーストインプレッションを最も重要視しています」でその次に「このキャラたちをこんな舞台とこんなシステムに乗せています」っていう具合に、システムはあくまでキャラを際立たせるギミックとして見せるべきなんじゃないかと。

御影 これは社内でいつも言ってるんですけど、オリジナルゲームを作れなくなったらイメージエポックの存在意義はない。昔こうだったから…じゃなくて、いま何が必要なのかを考えてチャレンジをしていかないと、何も得られないと思っているんです。

だって、イメージエポックが倒産しても悲しんでくれるユーザーさんはさほどいないでしょう。だったら皆が喜んでくれて悲しんでくれるくらい成長しきるところまで走りきらないと、そもそも僕達の存在意義が無いんです。

水谷 僕がゲーム業界入りたての頃、ちょうど新しいRPGが次々に生まれていた時代だったので、RPGは新しさの象徴であり、あらゆるゲームの中心だったんです。それが今は王道から脇道にそれたり、システムに特化しすぎて、ただただ複雑になり、進化の袋小路に入り、大作・シリーズもの以外は成り立たない空気になってる。でも、その流れを変えていきたい。

さらに言えば、御影さんがイメージエポックで言っていることと同じ意味で、この先マーベラスが生き残っていくためにはフラグシップとなるRPGが絶対に必要。それが生み出せないと、ゲームファンに対してマーベラスのアイデンティティはいつまでも見出せない。だからこそ真心込めて、作ってきたんです。

御影 マーベラスって、ここ2~3年で空気が変わりましたよね。ネットの評判を見てもがんばっているという声が結構あります。でも、たぶんその言葉は過去に対してのもので、最近思うんですけど、ゲーム会社ってユーザーの2~3年先を走ってなきゃいけないんですよ。それで作った作品を後ろに置いてくる。だから、頑張っていると言われてる頃には、次の作品を作ってなきゃいけない。

そういった意味では、『ARF』はそれにふさわしい作品になったと思います。それに現在もすでに新しい挑戦も始まっていますし。『ARF』の次に新たなキャラRPGが出てきたとしても、当分は負けないと胸を張れる作品だと思っています。作り上がったときにスタッフみんなに、本当にありがとう、って思いました。

水谷 あとはユーザーのみなさんにどこまでそれを伝えられるか。自分が信じているものを売りたいので、そこは死にものぐるいでがんばります!

Arcrise Archives(1)「水谷×御影 対談」ノーカット版(前編)

このブログでは初めまして! このカテゴリを担当することになりました、マーベラスエンターテイメント・プロモーションチームの高島です。

宣伝担当・中村とともに『アークライズ ファンタジア』の広報宣伝プロジェクトにどっぷり何枚もかんでます。どうぞお見知り置きを!

さて、今日からこのブログの場を借りて始まる「Arcrise Archives(アークライズ・アーカイブズ)」は、このゲームに携わるスタッフたちが想いを込めた言葉で綴るアーカイブです。

第1回の今回は、公式サイトで公開中の「制作スタッフの情熱・マーベラスエンターテイメント水谷プロデューサー×イメージエポック御影制作プロデューサー対談」より、スペースの関係でカットした内容を加え再編集した、アーカイブ限定ノーカットバージョンをお届けします。

収録時のナマ感を意識して編集した結果、前後編の長編となりました。どうぞ最後までじっくりお読みください。


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1)目指すのは任天堂ハードのフラグシップ


―― まずは、お2人の出会いをお聞きしたいんですが。

御影 もともとは共通の知人の紹介です。マーベラスに水谷さんっていう人がいて、怖い人だけどたぶん気が合うよって言われて、じゃあ会ってみようかと。
その頃はイメージエポックを立ち上げて1年ちょっとくらいで、複数社からRPGのグラフィックの仕事を受注して会社を運営していました。

―― 水谷さんから見て、御影さんはどんな印象でしたか?

水谷 一見優しそうだけど、言葉にする時、力を込める人だなぁ、根性もありそうだなと思ったのが最初の印象でしたね。きっと言ってる事の半分は本当じゃないんだろうなぁ、と思いましたけど。何事も言葉にしてから達成していくタイプですね。

御影 ひどいなぁ(笑)。でもそれは自覚しています。自分は基本ビックマウスですから。ただし僕の事を良く知っている人は知ってますが「達成できる!」と確信した事しか言いません。自分の中で計算して成功確率が低いと判断すると発言しないんです。
ときどき付き合いがまだ浅い方から、御影さんならそこは一気に行くんじゃないの? と言われる事がありますけど、相当計算してから動くタイプなんです、これでも(笑)。

水谷 そうですね。こう言うと失礼かもしれないんですけど、自分に似てて浮いてるなぁ(笑)、と。でも野心を持った若者が少ない昨今で、きっと有言実行の努力をする人なんだろうなぁって、すごく感じました。

御影 僕はとにかくチャンスがほしかったので、それを得るために人生をかけてましたね。でも3年以上前のことはじつはよく覚えてないんです。『ルミナスアーク』立ち上げも、ゲームは作れるけど企画書の書き方は知らなかったし、通せるほどのスキルもなかったはずで。だから何で作れたのか、今思うと不思議な作品なんです。

水谷 『ルミナス』は最初ペラで3~4枚の企画から始まって、実際そこからまったく変わってはいるんだけど、マーケットデータ的にS-RPGというジャンルと、ターゲット、プラットフォームがマッチングしているという信念の元に立ち上げたタイトルでした。

―― S-RPGとしてはオーソドックスな作りの作品でしたね。

御影 変化球で行くつもりは全然なくて、「王道のS-RPGを」という信念がありました。ただ、当時のイメージエポックというか、僕が力足らずで、まだまだ未完成な会社と作品だったんです。
これはよく覚えているんですけど、ゲームが完成した後に水谷プロデューサーが叱りに来たんですね。叱られて、それでこの人は怒るべきとき怒れる人なんだと。当時できてないことが確かにいっぱいあって、それがものすごく、くやしくて。
でもその経験というか失敗があったからこそ、『ルミナス2』がまずは平均的に満足いくものに仕上げられたとは思っています。

水谷 そういう意味では、最近は失敗できる環境がないし、失敗するほどのハッタリを掛けてくる人もそうそういないんですね。ある種無謀なチャレンジだったかもしれない。
そう考えて振り返るとこの『アークライズ ファンタジア(以下ARF)』も、よくこれほどのプロジェクトが立ち上がったな、と。当時自分で自分に対してハッタリを掛けてた気がします。

御影 そうですね。それはその通りだと思います。

水谷 だからそのハッタリを真実にするために、いろんなことを考えたり、いろんな人と会って、いろんなことをやってきました。

―― 『ARF』の企画はどんな風に立ち上がったんですか?

御影 企画当初はまず、各社動向を調べ尽くしました。その結果、自分達よりも早く「WiiでオリジナルでストレートなRPGを立ち上げようと思っている人間は絶対いない」っていう確信を得たんです。つまり、WiiならRPGのフラグシップを狙える。その直感を信じていけば、『ルミナス』のときと同じような成功につながるイメージが浮かんだんです。

水谷 本当に自然に、新しいRPGだからWiiしかないよねって、天啓のような機運を感じました。それに主観かもしれないんですけど、今残っているRPGの起源を見ると、全部任天堂ハード発のシリーズなんですよね。

御影 それって僕の中では、任天堂ハードのユーザー=「任天堂ゲームのファン」だからなんです。目の肥えた任天堂ゲームファンに認めてもらったゲームだから、すごく末永いんです。任天堂ゲームファンに認めてらえる一本に、『ARF』はなりたいんです。


2)21世紀にふさわしいキャラクターの刷新を!


―― ハードが決まったところで、あとは順調に…?

水谷 まだまだ。最初はキャラクターでかなり迷走しました。

御影 水谷さんはキャラのこだわりが僕より何倍もあるんですね。

水谷 自分はキャラが好きで、考えることが楽しいし、キャラが最大限に活躍できる場がRPGだと思っているので、同時に本当につらい(笑)。キャラの数だけ、つらい思い出があります。

御影 僕も声を大にして言いたいんですけどすっごく大変でした(笑)。

水谷 でもそのかいあって、キャラの感性としては間違いなくいちばん新しい自信があります。キャラの立ち振る舞いや考え方、繰り広げられる物語、そこから受ける感覚的なもの。メインキャラクターデザイン原案に『エウレカセブン』の吉田健一さんを起用したのもそういう意図があります。
本来日本は、古来から歌舞伎、浮世絵に代表されるキャラの国。江戸時代に庶民がカラー刷りの役者絵をもっていた国なんて他にないですよ。そういう意味で世界でいちばんキャラを生み出してきた国なんです。いまもマンガ、アニメ、ゲームは世界の最先端を行っていると思ってるんですけど、この3者の中では、変革の波が押し寄せるのはゲームがいちばん最後なんです。
そして今、21世紀に入って、「キャラクター」の概念がだいぶ刷新されてマンガ、アニメでは爆発的に進化しているにもかかわらず、ゲームがそれにいちばん追いついていない

御影 そこはまったく同感です。自分も良く言いますがゲーム業界のキャラクター提案は現代の同人作品のそれに比べても著しく古いと思っています。
企画当初に水谷さんと「泣けるRPGを作りましょう」を合い言葉に、大の大人がアニメについて何百時間も議論したんですけど、その結果、今回ゲームとしてリスペクトしたのは『機動戦士ガンダムSEED』と『コードギアス』なんです。この2作品が好きな人が楽しめるように努力していますし、今公開されているキャラにも、もし一人でも気になるキャラがいたら、絶対ハマります。

水谷 今の高校生の感覚を意識して、かなり注意深くチューニングを行っています。この『ARF』に今の日本のキャラの本質が出ていると言っても、過言ではないと思ってます。

御影 キャラ系RPGってシンプルに言って、いかに活きのいいキャラを提供し、それをじゃましないシステムがあるかが大事だと思ってるんですけど、『ARF』が最後に引き締まったのは、水谷さんの最後の詰めのおかげだと思いますし、まさに今回評価してほしいのはその部分なんです。

―― 御影さんは他のインタビューでも「思いのほか良くできた」とコメントされてますけど、具体的にはどういうことなんですか?

御影 プレイしてイライラするところがない点ですね。サクサク進めるテンポとスピード感をいちばん大事にしていたので。RPGってどうしても調整期間で決まる部分があるんですが、今回はそこに十分な時間をもらったので、本当に良かった。当初の想定よりも、1.5倍くらいはクオリティが上がったと思ってます。

水谷 僕から見ても、もともと目標としていた水準は軽く超えていますね。御影さんの言うテンポもそうだけど、ドラマ展開のバランスがすごく良いのでプレイしていて感情移入がしやすいんですよね。

御影 先日、デバッグのスタッフ全員に正直な感想を聞いたんですよ。だいたいの意見としては、面白さという意味で既存の大作RPGシリーズとくらべて遜色ない。ただ正直に言えば、プレイ時間がストレートに遊んで約30~40時間なので、ボリュームという意味では60時間以上遊べる作品には負ける。
でもこれって、今のコンシューマのRPGの勢力図で言えば、『ドラクエ』『FF』の2強に次ぐ3番手を各社の看板RPGが競い合っている状態なわけじゃないですか。だから、3番手に次ぐ作品に届いたかどうかはユーザーのみなさんの判断にお任せするけど、それに限りなく近いものがここにある、っていうことなんです。

水谷 自分もまず4番手に食い込む、というのが自分の中の目標にあったんですが、そこにいけたかどうかはみなさんの御意見をぜひ聞きたい部分です。ただ、自分としては、ある意味ではそれを超える手応えは感じています。

御影 これは作った本人だから言ってるわけではなく、僕はここ10年くらいに出たRPGをほとんど遊んでクリアしてきた人間なので、その確信を持って『ARF』はおもしろい、と思っています。キャラ系RPGが好きな人の期待は裏切らないと信じていますし、意見をバンバン欲しいと思っています。

(後編に続く)