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ギリシャ神話の主神ゼウスは、一方で非常に浮気な神として描写されており、正妻である女神ヘラの他に何人も愛人を作り、数多くの子をなしたことで知られている。

時には拉致同然の方法で無理やり相手を連れ去って愛人にすることもあるが、これらの愛人の多くは、正妻ヘラの嫉妬を受け、恐ろしい手段で復讐されている。

ラミアも、ゼウスの愛人の1人であった。ラミアは、エジプト王ベロスとリビュエの娘であったが、やはりヘラの嫉妬を受けた。そしてそれ以上ないほどむごい形で復讐された。

狂気を操ることのできるヘラは、ラミアに子供が産まれたとき、彼女の正気を奪って自分の子供をむさぼり食うように仕向けたのだ。
正気に戻ったラミアは嘆いた。その嘆きはあまりにも深く、彼女の姿形さえ変えてしまうほどだった。こうしてラミアは、上半身が人間の女性でありながら下半身は蛇の姿となり、洞窟に潜んで、他人の子供をさらってはむさぼり食う妖怪と化した。当時の母親たちは自分の子供に「行儀よくしないとラミアが来るよ」と叱りつけるのが常だった。 時代が下るに連れ、ラミアも新しい能力を身に付けたらしい。美しい人間の女性に姿を変えて若者と結婚しては、夫を食うようになっていた。また、どんな物質でも作り出せるようになっていた。ただ、ラミアが作り出す物体は幻影であり、重さがまったくなかった。

 ラミアが最後に姿を見せたのは、紀元前後の頃であった。このとき、ギリシャのコリントでは、ある大金持ちの未亡人がメニプスという若者と婚約したことが一番の話題になっていた。婚約祝いとして、町中に金貨をばら撒いたという行為も評判になっていた。そこへ姿を見せたのが、不思議な力を持つ賢者、ティアナのアポロニウスであった。落ちていた金貨を拾ったアポロニウスは、ふと首をかしげた。重さがないのだ。

 こうして未亡人の正体を見破ったアポロニウスは、婚礼の席に乗り込むと、花嫁の前に進み出た。無礼をとがめる市民たちをよそに、花嫁に向かって何やら呪文を唱えた。すると美しい女性の姿が次第に崩れていき、最後には白骨だけが残ったという。ラミアの哀しい最期である。


参考:マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル『ギリシア・ローマ神話辞典』大修館書房
    山北篤、佐藤俊之監修『悪魔事典』新紀元社
    羽仁礼『図解近代魔術』新紀元社

    
    

羽仁 礼 PROFILE

島根大学卒業。少年時より超能力や死後の世界などの不思議な現象全般に関心を持ち、 長じては世界を放浪して数々のミステリー・スポットを実際に踏破。 現地調査に基づいた独自の研究を続けている。 著書に「超常現象大辞典」(成甲書房)、「図解近代魔術」(新紀元社)ほか。   



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