“背景のつくり込み”でユーザーを引き込む
ゲームの住人になって…
新卒後に別会社のコンシューマ畑で働いた後、マーベラスに転職しました。現在、マーベラスではコンシューマチームで主に3D背景制作全般を担当しています。コンシューマではハイエンドな開発ソフトやハードに携われる機会が多いのが魅力で、一貫してコンシューマ畑でキャリアを積んでいます。
ゲームにおける背景は、“ユーザーがその世界観に入りこめるかどうか?”を左右する重要な要素だと思っています。企画書の設定やプロデューサーの意向を脳内で膨らませて、常に想像力をめぐらせるようにしています。例えば、「この世界で自分が農民として暮らしたらどうだろう?」「ここは砂漠の街だから、家は砂嵐対策をしているはず……」というかんじで、実際にゲームの世界の住人になったつもりで具体的に思い描くのです。そして、そこで得たイメージをゲームデザインに調和するよう気を配りながら、背景に盛り込んでいきます。
リアルなプロップ(小物)が完成度を高める
マーベラスで最初の仕事は『GOD EATER 3』の背景モデリングでした。設定画に描かれている造型物からモデル素材をつくり込んでいきますが、ステージを構成するにはさらに素材が必要になる場合があります。設定画には描き切れなかった要素を世界観にマッチするように自分でデザインしたり、設定画の担当者と相談してつくり上げていきます。このようにして、その背景のベースとなる地形から、さまざまな「プロップ」(小物)をつくる作業までを行いました。例えば、家の内部の3Dモデルを制作する場合で言うと、まず壁や床といった内装、机や椅子などのプロップをつくり、それらを組み合わせて室内を表現するという感じです。モデル作成にはSubstance Painterや、時にはSubstance Designerを使用して独特な質感を表現することもありました。
空間にモデルを配置したら、ライティングの調整を行います。「光はどの方向から当たってどう反射しているのか」といった計算が行われ、ポストエフェクトと合わせてリアルな、あるいは映画のような描写ができ、これが本当に難しいのですが、同時に楽しい作業でもあります。ライティングやポストエフェクトが仕上がったら、ゲーム内の処理負荷の様子を確認しながら、それらが最適化されるようモデルを調整します。さまざまな要素が組み合わさってゲームの画面ができ上がるわけですが、始めのプロップの出来によってすべての完成度が変わってきますから、重要なポイントですね。
他人の視点で新しい発想が
これらの作業全般で心がけているのは、なるべく多くの人から意見をもらうこと。ひとりで作業していると方向性が凝り固まってしまうので、別の視点で見てもらって適宜調整しています。以前、作業に行き詰まり自分ひとりで悩んでいたところ、上司に「ここはこうすれば良くなるんじゃない?」とアドバイスされ、それがまさに晴天の霹靂のようなひと言だったんです。自分だけでは思いつかない、まったく新しい発想をもらえることに気づいてからは、上司に限らずいろいろな人の声に耳を傾けるようにしています。
海外スタジオのような雰囲気
仕事中は、チーム全体のパフォーマンスをいかに上げるかも考えています。例えば、最近のゲームでは背景描写で扱うポリゴン数やデータ量が膨大で、作業時間もかなりとられてしまいます。そこで、手動で行う単純作業を自動化できるスクリプトを組んだこともありました。Mayaでモデリングを行う際に必須のスキルではありませんが、汎用性の高い処理が組めればチーム全体の作業効率もアップすると思い、1日スクリプトの勉強させていただいたこともありました。実際にやってみて、「これはスクリプトでは難しいな……」ということもあるのですが、マーベラスはこういった時間も無駄なものと切り捨てず認めてくれるので、研究開発にもチャレンジしやすいです。
スクリプトの勉強をしているとき、たまたま通りかかった上司がいろいろと教えてくれることもありました。上司はもちろんスタッフの皆も、通常業務から横道にそれるようなことでも、何か困りごとがあればいやな顔ひとつせずに教えてくれますね。気軽に何でも相談できる、そんな海外スタジオのようなオープンな雰囲気がマーベラスにはある気がします。だから私自身も刺激されて、向上心が生まれるのかもしれません。
適材適所、個々の能力を生かす
私は新しい技術を習得することが好きなので、最新ツールや自分の知らない分野にも積極的にチャレンジしていますが、現場では自分の職人的スキルを突き詰めたいというスタッフもいて、それぞれのやり方でスキルアップに努めています。会社としては、あくまで本人の意向を尊重した上で適材適所を考えて、それぞれが実力を充分に発揮できるような仕事を割り振っている印象がありますね。
最近はチームリーダーも任されているので、どうしたらスタッフの能力を生かせるのか、相乗効果が生まれるのかを意識しています。今後は、新しいツールを使って自身のクリエイターとしてのスキルを磨くことと、チーム全体の力を上げること、このふたつを頑張っていきたいです。
発売元:株式会社バンダイナムコエンターテインメント
開発:株式会社バンダイナムコスタジオ、株式会社マーベラス