デバッガーだからこそ気付ける視点がある
“バグ修正”だけがデバッグじゃない
私はマーベラスに入社する前は、他のゲーム会社の品質管理部でコンシューマ系ゲームのデバッグをやっていました。その後、転職活動をしているときにマーベラスに務めている友人から、「試しにうちも受けてみたら?」と声をかけてもらったのがきっかけです。いざ面接に行ってみたところ、「デバッグの仕事はバグを検出して、修正するだけではない。クオリティを上げるのが良いデバッグです」という面接官の言葉に共感を覚え、「ここだ!」と決めました。
仕様書を超えたところにある可能性
デバッグって、仕様相違や実装のミスを検出し、それを修正していく仕事と思われがちですが、私はそうは考えてないんです。もちろん、そういった不具合は修正します。しかし、その過程で「ここをこうすれば、もっとこのゲームはおもしろくなるんじゃないか?」という点を発見し、それを形にしていくことがデバッグだと考えています。
もしかしたら他の会社では、デバッガーという立場上、仕様書の根本的な修正提案などは通りづらい、発言しにくい状況があるかも知れません。でも、そういう意見を聞いてもらえる社風というか職場の雰囲気がマーベラスにはあります。
コンシューマのゲーム開発は、半年や1年では終わりません。数年かけて進行するプロジェクトのため、プランナーやプログラマーはそのゲームを触り過ぎて感覚がマヒしてしまうことがよくあります。第一スタジオのディレクター陣は、「開発中期や後期からゲームに触れているデバッガーの意見を大切にしたい」という想いがあるのだと思います。
普段から上司と何でも話せるスタジオ
普通は、仕様書と違ったアイデアが出た場合でも、まず直属の上司に話して、許可が出たら会議で企画を出してディレクターの意見を仰ぐ──といった複数の手順が必要なのでしょうが、ここ第一スタジオのスタジオ長である佃さん(※『DAEMON X MACHINA』プロデューサー)は、普段から現場のスタッフと気さくに話をしてくれる人なんです。
以前、『DAEMON X MACHINA』のデバッグ時には、世間話の延長で提案をしたことがありました。佃さんは真剣に耳を傾けてくださるだけでなく、「この仕様ってどう思う?」と私の意見を聞いてくださいました。デバッグリーダーとして、信頼していただいてることをそのとき実感しました。
こういったどんな職種や立場にもフラットで、トップが気軽に意見を聞いてくれる雰囲気が第一スタジオにはあります。「良いゲームをつくりたい! 深くゲーム開発に携わりたい!」と考え、自分の意見を出せる人はやりがいを感じられると思います。
「コンシューマとオンラインの違い」
私がマーベラスに転職して、最初に担当したのはオンラインゲームでした。オンラインはカジュアルに遊べるのが魅力の一つ。可能な限り継続して遊んでもらうことが大事です。そのために施策やアップデートを行ないます。一方のコンシューマは一つの映画を見るような、重厚なストーリーやシステムをじっくり遊べるのが魅力だと思っています。もちろん何度も遊んでもらえたらありがたいですが、一つの作品として思い出に残るような、「マーベラスが出した○○って作品、良かったよねー、続編とか出ないかな?」そういう会話が聞けたらうれしいですね。
ただ、今後はオンラインとコンシューマの垣根はなくなっていって、さまざまなプラットフォームでコンシューマのようなボリュームのゲームが遊べるようになってくると思います。個人的にはどちらも経験しているので、この経験を活かしていきたいですね。
“バグを修正する”という観点から言えば、どちらも同じ作業を行なうこともあります。しかし、コンシューマデバッグではスマートフォンの端末の知識だったり、iOSやAndroidの知識は必要ありません。逆に、PlayStation®4~PlayStation®5やNintendo Switch™のハードに関する仕様規定やUnreal Engineなどエンジンに関する知識が必要になってきます。大きなところはこういった知識や経験かと思います。
“スーパーサブ”な開発業務チーム
入社後、オンラインゲームのデバッグを7年ほどやりましたが、2年ほど前に新設された開発業務チームでは「開発チームのサポート業務」も担当しています。もちろんデバッグが主な仕事に変わりはないのですが、スーパーサブのような立ち位置で、その時々でヘルプが必要なプロジェクトチームにアサインし、サポートしています。
海外事業部と連携して、日本語以外の言語の販売をフォローしたこともあります。これまでこういう仕事は各部門のリーダー(プロデューサー)や営業がやっていたのですが、それだとどうしてもそれぞれの本来行うべき業務に支障が出るということで、開発業務チームが発足したんです。
部署を超えて仲間になれる喜び
開発業務チームで印象に残っている仕事は、「プレイ動画作成・素材撮り」です。『DAEMON X MACHINA』の販売に関わる一部のムービーを、PremiereやUnityでつくりました。それまで動画編集をしたことはなかったのですが、はじめて触る最新ツールを使ってのムービーづくりは非常に新鮮で、時間を忘れて作業していました。
こういった販促ムービーは、それまで営業や宣伝の仕事でしたが、実は発売前のゲームをいちばんプレイしているのって私たちデバッガーなんです。デバッガーだからこそ、ゲームをやり込んだからこそ、知っているそのゲームの楽しさを盛り込んだムービーがつくれたと自負しています!
オンライン4人プレイのムービーづくりでは、各部署の手の空いているスタッフに声をかけ、ワイワイ遊んでいるような雰囲気でムービーをつくりました。各部署にそういう声をかけられるほど親しい仲間ができるのも、“スーパーサブ”な開発業務チームならではだと思います。
プレッシャーの先に見つけたもの
開発業務チームで絶対にミス出来ない仕事は、プラットフォーム申請です。SIE(Sony Interactive Entertainment)さんや任天堂さんなどのハードメーカーとゲームを発売するための申請や相談を行ったりする仕事です。このプラットフォーム申請は社内でも経験しているものが少なく、ナレッジがない状況でしたので、プレッシャーはかなりありました。だからこそ、身に付いたスキルも大きかったと思います。
昨今、ゲームをプレイできるプラットフォームは多様化してきており、家庭用ゲーム機だけでなくPCやクラウドでも遊べる時代です。「プラットフォーム申請」のようなスキルは、これからのゲーム業界では必須になっていくと思うので、このタイミングで学べたことは良い経験になりました。こういう次世代のスキルも仕事を通して磨いていけるので、自身が成長しているのを実感しています。