◆ 第1話 ◆
ある日突然、あなたの元に届く招待状。
それは一生に一度だけ手にすることができる、美の世界への片道切符・・・・・
ようこそ、究極のビュィーティーサロン「セレブリティ」へ!
「コマンタレブー?我がビューティ★ボーイズ。
早速次のレディーがお待ちかねだ。彼女は、ある理由から美の世界へ足を踏み入れることを拒み続けている。しかし、君たちの手にかかれば、どんなレディーも生まれ変わるだろう。健闘を祈る!」
「セレブリティ」のオーナー・美乃達人(よしのたつひと)からのメッセージに耳を傾ける店長・西郷山龍彦(小木茂光)。
そこへ、恐る恐る店のドアを開け、仲田里美(悠城早矢)が入って来た。前髪で顔を隠し、自身なさげに店内を見回す里美を、ビューティ★ボーイズが向かい入れた。
「今日は君が誰よりも美しくなれる最初で最期のチャンス。」幼い頃から美の英才教育を受けてきたサラブレッド・涼(中河内雅貴)。
「このセレブリティに招待されるのは、一生に一度だけ。」12歳で単身NYやパリに渡って様々な栄冠をつかんできたツワモノの豪(小谷嘉一)。
「今君はそこに立ってる!美の世界の入り口で、美しさに飢えている!」
北海道の牧場で生まれた自然を愛する寡黙な青年の景(真山明大)。
その横では華麗なメイクアップアーティスト・塁(松本寛也)と、その弟の若き天才ネイルアーティスト・潤(加藤将太)、そして、みんなの良きオネエ様!・近藤(菅原永二)が微笑んでいる。
まだ戸惑っている里美を囲み、3人のボーイズたちによるビューティーカウンセリングが始まった。
このカウンセリングで、3人の中の誰が里美の担当になるかが決まるのだ。いやがうえにも高まる緊張感。さぁ、決戦のゴングが鳴った!
「どんな風に美しくなりたいの?」と積極的に質問する豪(小谷嘉一)。
「僕に任せれば、どんな男も必ず君を振り返るように美しくしてあげる。」自信たっぷりに微笑む涼。
「・・・・・。」そんな2人とは違い、景だけは、何かを考えるように黙り込んでいた。
しかし、里美はコンシェルジュたちに言った。
「すべての女が、男のためにきれいになりたいと思ってるわけじゃないわ!私は自分を捨てた負け犬なの!」
突然の里美の怒号に驚き、一瞬の静寂が流れる。
「そこまで!」西郷山の高らかな声がそれを破った。3人の顔と里美の姿をゆっくりと見渡す西郷山。
「彼女の担当は・・・景、お前だ。」西郷山の揺るぎない声がフロアに響いた。
西郷山に景のサブを命じられたことを不服に思った涼は、景の目をぬすんで里美に優しく声をかける。
「明日、同窓会があるんだって?君が勝ちたい女の子は誰?僕が完璧な美の方程式で勝たせてあげる。」
里美は、携帯の写真を見せた。そこには、里美と仲良く笑う美人の友達の顔が…。
間もなくフロアに戻って来た景に、里美は言った。
「その子と同じにして!髪型もメイクも洋服も全部!」
複雑な表情で、鏡に映る里美の顔を見ていた景だったが、ふいにゆっくりと目を閉じてハサミを取り出した。
あろうことか、景は目を閉じたまま、里美の髪をザクリと斬った。動揺する里美に景の落ち着いた声が聞こえる。「動かないで!動くと怪我をするよ。」
全く迷いのないハサミさばき。まるで見えているように華麗で鮮やかに髪をカットしていく。これが知る人ぞ知る、景の得意技“心眼切り”だ!
久しぶりに出た景の心眼切りを目の当たりにしたボーイズたちも我を忘れて見入ってしまう。景は大胆にバサバサと髪を斬り落としていく。しかし、それは里美のオーダーを無視したものだった。
ゆっくりとハサミを置き、目を開ける景。だが、里美は怒りでわなわなと振るえていた。
「あなたたち、私がブスだからって、やっぱりバカにしてるんでしょう!」
カットをし終えた里美は、泣きながら荷物を抱え、店を飛び出した。
「・・・・・・・・・・・・。」
里美に言葉をかける術もなく、黙ってその背中を見送る景。
「やっぱり、俺この店やめます。」
ギュッとハサミを握り締め、一人フロアに佇む景に西郷山は言う。
「お前は彼女の何を切ったんだ? 考えるんだ、景。」
里美はもうこの店に戻って来ないのだろうか?
客のオーダーを無視した景はどうなってしまうのだろうか?
そして、里美が求める本当の“美”とは・・・・・・