美容少年★セレブリティ

次回予告&ストーリー

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◆ 第2話 ◆

昨日、景の対応に怒って店を飛び出していった里美は、同窓会当日の昼を過ぎても「セレブリティ」に戻って来なかった。
「お客様を美しくして旅立たせるまでは、次の客は取らない」というオーナーのポリシーのため、次の客を入れるわけにもいかず静まり返っている店内で、ビューティ★ボーイズたちの間にもピリピリとした空気が漂う。そんな中ただ1人景だけは深く目を閉ざし、瞑想していた。 一方西郷山は、オーナー・美乃達人の肖像画に話かける。
「美を妨げる最大の敵は自分自身。彼女も戦っているのでしょう、誰かさんと同じように。」

2話イメージ1 景が目を開けたその時、店のチャイムが鳴った。里美が戻って来た! 里美の手には小枝子と一緒に写るたくさんの写真。それを景に突きつける。
「どう?私きれい?ほら、何も言えないじゃない!やっぱり私は負け犬なのよ!」
そして里美は高校時代、初めてできたカレシを小枝子にとられたことを打ち明けた。
「私、今日こそは勝ちたいの!だからこれと同じにしてちょうだい!」
里美が見せたのは、ド派手な外国人モデルの写真だった。
驚いて何も言えない景を尻目に、里美はさらにエキサイトする。
「こんなもの、もう要らない!」
景のハサミを奪って小枝子との思い出の写真を真っ二つに切ろうとしたその時、静かに景がそれを取り上げた。
「お望みなら僕が捨ててあげる。」
そう言った景は、静かに怒っているようにも、どこか悲しんでいるようにも見えた。
やがて里美は、ビューティ★ボーイズたちの手によって、外国人モデルそっくりの外見に仕上がった。鏡に映る自分の姿を見て満足気だ。

2話イメージ2 しかし「下手に塗りたくった絵のようだ…」とビューティ★ボーイズからは、うんざりした声が漏れる。それまで黙っていた景が、里美を呼び止めた。
「ちょっと待って。まだ仕上げが残ってる。」
景はもう1度里美を席に座らせ、ゆっくりと肩のマッサージを始めた。
「君はずっと小枝子ちゃんに対抗意識を燃やしてきたけど、小枝子ちゃんはどうだろう?」
その時、ふいに緑に輝く草原のような爽やかな風が吹いた。
「一番最初に小枝子ちゃんを見たときどう思った?それが本当の素直な気持ちだよ。」
景は自分の父親のことを話し始めた。厳しい父を恨んだこと。認めて欲しいと努力したこと。だけど、今でも追いつけないこと。そして、大好きな父は・・もういないということ。
「僕は昨日、君の“心”を切ったんだ。 美しくなりたくないという心、自信を持てない心、友達を愛せない心。」
里美の目に自然と涙が溢れ、やさしい風が頬を撫でる。
景は里美をシャンプー台に座らせた。
「大切なことを教えてあげる。 “きれい”になるんじゃない、“自分”になるんだ。 戻ろう!小枝子ちゃんと初めて出会った頃に!」
景が、里美の瞳から流れ落ちた涙を指ですくいシャンプーに混ぜた。
出た!景の必殺技「眠り羊」だ!
景のなめらかな指が、里美の髪を1本1本洗い上げる。いつの間にか店内は、シャボンの泡でいっぱいになっていき、里美は安らかな表情でコトリと眠りに落ちた。
2話イメージ3 景が幼い頃、牧場で景にシャンプーされて眠らなかった羊は1匹もいなかったという。
眠り羊から目覚めた里美は、本当に生まれ変わったようだった。
「おかえり。君は今、君に戻ったよ。」
景のピュアな微笑みに、里美も素直に頷く。

緊張の面持ちで、カーテンの前に傅く(かしずく)ビューティ★ボーイズたち。
西郷山の声がフロアに響き渡る。
「出でよ!我らが美の女神よ!」
カーテンが開き、美しく変身した里美が現れた。それはシンプルなピアノの音色のようだ。

景は里美に歩み寄り、捨てたはずの小枝子との写真を渡した。そこには幸せそうに笑う仲の良い2人の女の子が写っていた。
「ありがとう。また今度・・・は、ないのよね。」
景が頷く。里美の顔には、初めて見せる最高の笑顔があった。
「しっかりとその目に焼き付けて下さい。あなたは今この世でもっとも美しい!」
西郷山の言葉と共に、里美は美しくなって旅立って行ったのだった。


(c)美容少年★セレブリティ製作委員会