美容少年★セレブリティ

次回予告&ストーリー

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◆ 第4話 ◆

「俺の完璧な計算に、間違いがあるはずがないんだ!」
完璧なスタイリングを直子にグシャグシャにされ、控え室で憤る涼。
「この仕事にとって大事なのは知識と正確な技術だって言ったよね?」
突然の声に振り返ると、そこに景が立っていた。
「今でもそう思ってるの?」やさしく問いかける景に、涼はやり場のない怒りをぶつける。
「お前、俺を笑いに来たのか?じゃあ、お前の理想の美って何だよ!」
「わからない。でも、僕はこの仕事が好きだ。」

4話イメージ1 その頃、鏡の前でイライラとしている直子に豪が言った。
「『あなたがもっとも輝いていると思う女性は?』ってとこに、『自分の仕事に誇りを持っ て頑張っている女性』って書いてあるぞ!これって自分のことじゃねーのかよ!」
思わず答えに詰まる直子。そこに戻って来た涼は、すべてを悟った。
涼はグシャグシャになった直子の髪に、いたわるようにやさしく触れ、ゆっくりとブラッシングを始めた。
「知ってる?髪にとって一番いいとされているのはブラッシングなんだ。」
黙って涼の声に耳を傾ける直子。ビューティ★ボーイズたちも固唾を飲んでそれを見守る。
「ブラッシングには、髪に付いたホコリを取り除き、ほつれをといて、ツヤを出す役目がある。」
4話イメージ2 髪をとく音が、静かに心地よいリズムを刻む。涼の言葉は続く。
「君は、結婚して新しい輝きを手に入れようとしてるんじゃない。 大切なものを捨てようとしてるんだよ。」
髪のほつれがとれるように、直子の気持ちもほどけていく。
直子は本当は仕事が好きだと言った。恋人と過ごす時間も、友達と遊ぶ時間も割いてまで仕事に没頭し、そのかいあって新しい企画のプロジェクトを任されるはずだった。しかし、男性に媚びているような仕事もろくにできない女性が、プロジェクトに選ばれたせいで、直子はその仕事を外されてしまったのだ。
「その彼女と一緒だったんだね?このカラーとこのウェーブが。」
素直に頷く直子。自分が望んだヘアスタイルが、憎んでいた人と同じだったなんて・・・。
「君に否定されてわかったことがあるよ。僕はこの仕事が好きなんだってこと。  そして、好きな仕事ができるってことは、とても幸せなことなんだって。」
そう言った涼の笑顔は、計算や技術ばかりに捕らわれていた今までの涼にはなかった輝いたものだった。
「今度こそ目を覚ますんだ!眠れる森の美女よ!」
涼のハサミが、ダイヤのようにキラリと光る。涼のエチュードが聴こえる!それは、今までとは違う柔らかな音色。涼のハサミが、ストラディバリのようなエレガントな音楽を奏で始めた!

今度こそすべて完璧に、直子らしい上品なキャリアスタイルに決まった。落ち着いたヘアカラーと、肩までのボブカット。しかし、直子は少し考えてから涼に言った。
「・・・もう1度だけワガママを言ってもいいかしら?」

4話イメージ3 「出でよ!我らが美の女神よ!」
西郷山のいつもの声がフロアにこだまする。カーテンがゆっくりと開く。
フロアに跪き、直子を出迎えたビューティ★ボーイズたちは、一瞬目を疑った。
「えっ?なんで?」
なんと、直子のヘアカラーは、あの嫌っている女性と同じだと言ったカラーに戻っていたのだ。
「だって、この色、私に似合ってるんでしょ?」
いたずらっぽく笑う直子。鏡越しに涼が頷く。
「ありがとう。あなたのおかげで一番大切なものを失くさずに済んだわ。」
そう言って、ツヤツヤと輝いた髪をなびかせ、直子は「セレブリティ」から旅立って行った。

その美しさよ!永遠なれ!


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