美容少年★セレブリティ

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◆ 第9話 ◆

「近ちゃ〜ん、今日なんか食いもん持って来てないの?オレ腹減ったぁ〜。」
ビューティ★ボーイズのよき姉(?)役の近藤に、ボーイズたちは空腹を訴える。
「今それどころじゃないの!!」
いつもはやさしい近ちゃんのピリピリとした空気。近ちゃんは、さっきから食い入るように鏡を見つめていた。
「ああ〜!もう皺がまた増えてるわ!」
「・・・歳だからじゃん。」豪の冷たいツッコミに、近ちゃんはムキになる。
「これは笑い皺!人生を楽しんでる人にしかできない、素晴らしい年輪なの!」

「ナマステ〜!ご機嫌うるわしゅう、我がビューティ★ボーイズ!」
どうやらオーナーは、インドにいるようだ。そのメッセージを聞く西郷山。
「次のレディがお待ちかねだ。名前は、槇村静乃(森泰子)。諸君の力で、彼女を究極の美へと導いて欲しい。」
「かしこまりました。」
オーナーの留守番電話に向かって、西郷山は律儀にお辞儀をした。

9話イメージ1 「出でよ、美の申し子たちよ!」
西郷山の声と共に、静乃前にビューティ★ボーイズたちが華々しく登場する!
しかし、静乃は・・・・
「えっ? 婆ちゃん・・・かよ。」
豪の言葉どおり、フロアの中央には、地味で暗い表情のお婆ちゃんが、腰を丸めて座っていた。おくれ毛が目立つ髪。伏目がちに俯く顔。そして何よりも、大事そうに風呂敷に包まれた箱を抱えていた。それはまるで骨壷のようで、静乃の不気味さにさらに拍車をかけている。
それでも、いつもと変わらず、ビューティカウンセリングのゴングが鳴り響く!
景と豪が、お婆ちゃんに美に関する質問をするが、のらりくらりとかわされる。
「あの、そんなことより・・・。」
そう言って静乃は抱えていた風呂敷包みを開いた。なんと、中からは重箱に入った弁当が!
「若い人のお口に合うかわからないんだけど・・・。」
そんな静乃の言葉より早く、豪と塁が重箱に入った太巻きを、手づかみでむさぼる。
「うめぇ〜!婆ちゃん、マジ旨いよ!」
「もう!あんた達、いただきますも言わないで!」
近藤の叱責とは裏腹に、静乃は嬉しそうに笑っていた。この店に来て始めて見せた明るい顔だった。近藤もそれを見て、ほっとした表情を浮かべる。
しかし、無情にも幸せな一時を遮る西郷山の声が。
「そこまで! 今日の担当は景、お前だ!」
また静乃の表情が暗く淋しげなものに戻ってしまったのを、近藤だけが見逃さなかった。

9話イメージ2 景たちが控え室で準備をしている間、重箱を片付ける近藤に、静乃はポツリとつぶやいた。
「楽しい時間って、ほんとあっという間に終わっちゃうのねぇ・・・。」
「だけど、お婆ちゃん、さっきステキな笑顔だったよ。」
そう言った近藤は、風呂敷にシミがついているのを見つける。古びた風呂敷には、昭和の日付が刺繍されていた。
「お婆ちゃん、この日付って、もしかして結婚記念日?」
恥ずかしそうに頷く静乃。近藤は、静乃にプロポーズの言葉を聞いた。
「俺が一生、お前をキレイでいさせてやるって。」
でも、そのお爺ちゃんも、今はいないのだと言う。また静乃の声が曇る。
「ねぇ、お婆ちゃん。この風呂敷お借りしてもいい?」
近藤は、わざと明るく振舞ってそう言うことしかできなかった。

9話イメージ3 景にシャンプーされている静乃。どこか落ち着かない様子の静乃に、景が言う。
「心配ないよ。すぐに終わるから。」
「そう・・・・すぐなの・・・・・。」
程なくしてシャンプーが終わり、今日はアシスタントであるはずの豪が調子よく言う。
「さぁ、婆ちゃん!美の世界への旅立ちだぜ!」
しかし、シザーケースに手を当てた景が青ざめる。ハサミがない!
一斉に店中を探し回るボーイズたち。そんな中、近藤だけはお婆ちゃんの様子に気付き・・・・。
静乃は黙って椅子に座ってうな垂れている。
ふいに西郷山がフロアに現れ、深々と静乃に頭を下げた。
「コンシェルジュにとってハサミは命です。それを紛失してしまった今、槇村様に美を施すことはできません。申しわけございませんが、本日はお引取り下さい。」
静乃の目が潤む。今にも静乃が口を開きかけたその時、近藤が言った。
「あたしがやったの!あたしがハサミを隠したの!
 だから西郷どん!お婆ちゃんをこのまま帰さないで!」

近藤に注がれるボーイズたちの視線。
再び深く黙り込んでしまった静乃。
年老い希望を失っている静乃を、本当に美しくさせる方法とは一体・・・・・・


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