◆ 第11話 ◆
「どうしても解散しなければならないのですか?」
沈痛な面持ちで、オーナーと電話で話している西郷山。しかし、オーナーの意思は固かった。
「すべてはセレブリティのためだ。セレブリティの真の目的とは何か、もう一度考えてみるんだ。」
そんなことを知る由もなく、のんびりと控え室で“ババ抜き”をしているビューティ★ボーイズたち。楽しそうにしてはいるが、話題はその場にいない涼のことばかり。みんなが涼の帰りを待ちわびているのだ。
その時、店のチャイムの音が鳴った!もしかして涼が・・・!
真っ先に玄関に駆けつける豪。しかし、そこにいたのは双子の姉・鈴川みどり(佐藤杏子)と、妹の鈴川あおい(佐藤葉子)だった。
ボーイッシュな格好で、ぶすっと不機嫌な態度のみどり。一方、あおいは女の子らしいワンピースで、ニコニコと愛想がいい。顔はそっくりだが、性格は真逆の2人。そして、その2人の関係は、決して仲が良いとは言えないものだった。
「彼らこそ、究極の美のアーティスト!人呼んでビューティ★ボーイズ!」
西郷山の声が、フロアに響いている。華麗に登場するボーイズたち。みどりとあおいも期待を込めた瞳で、ボーイズたちを見つめる。
「その勝負、もらった。」
突然の声に振り返る一同。そこにいたのは、まるでジョーカーのように黒ずくめの男・丸山デイヴィッド駿(Ryo)だった。デイヴィッドは、不敵な笑みを浮かべ、黒い封筒を西郷山に渡した。
そこには、「対戦状」の文字と、オーナーの名前が!
西郷山は、静かにボーイズたちに言う。
「どちらがより美しくさせられるか、彼とお前たち全員とで戦ってもらう!」
なんと、西郷山はデイヴィッド1人対し、ビューティ★ボーイズ5人で挑めと言うのだ。熱くなりやすい豪が、くってかかる。
「こんな道具も持ってないようなヤツ、俺1人で充分だよ!」
ニヤリと不気味な薄ら笑いを浮かべ、黒いロングコートを大きく広げるデイヴィッド。全員が、目を見張った。コートの裏にびっしりと揃えられた数十種類のハサミ、メイク・ネイル道具・・・・
「もしお前たちが敗れるようなことがあれば、ビューティ★ボーイズは解散だ!」
西郷山が、高らかに宣言した。
ついに、ビューティカウンセリングのゴングが鳴る!戦いは始まった!
イライラとして、すっかりペースを乱されてしまっている豪に対し、景はいつも通り冷静にカウンセリングを進める。
「今日はどんな風に美しくなりたい?」
その質問にみどりとあおいは、一瞬視線を交わした後答えた。
「あおいみたいに、子供っぽい媚びたようなカッコじゃなければ。」
「みどりみたいに、男みたいなカッコじゃなければ。」
困った表情を浮かべる景。カウンセリングを遠くから興味無さそうに見ていたデイヴィッドが言う。
「女が2人いれば、考えることはただ1つ。もう1人より美しくなりたい。
勝ちたければ、俺が担当になることを願え!」
ついに、豪がキレた。しかし、そんな豪を鼻にもかけずにデイヴィッドは言葉を続ける。この間、あるコンシェルジュと勝負をした。勝負はほんの数分でつき、相手は子供のように泣いて逃げたと。
「確かそのコンシェルジュの名前は、“涼”っていったけな。」
信じられない事実に、目を見張ることしかできないボーイズたち。・・・・あの涼が、負けた?!
ショック状態の彼らを我に返らせたのは、無情に響くカウンセリング終了の声だった。
姉のみどりをボーイズたちが担当し、妹のあおいをデイヴィッドが担当することに決まる。
涼の仇だと息巻く豪。まばゆい閃光がフロアに差す!出た!豪の「ダイナマイトフラッシュ」だ!
強風が髪をあおり、稲妻のような鋭いハサミさばきで、瞬く間にカットされていく!
だが、デイヴィッドの方に視線を走らせた豪は、驚きのあまり動きが止まった。
デイヴィッドの手さばきは、超高速で見えない!その残像だけが千手観音のように見えている。
まさに、“神業”だ!レベルが違い過ぎる・・・。愕然となった豪の手から、力なくハサミが落ちた。
あっという間にメイク・ネイルも仕上げ、ドレスアップしたあおいが登場する。
憮然とした表情であおいを見つめるみどり。勝ち誇った瞳でみどりに視線を送るあおい。
呆然とするボーイズたちの中で、景だけが力強く言った。
「まだ勝負は終わってない!諦めるな、豪!」
「無駄だよ・・・。」
聞き覚えのあるその声に、一斉に振り返るボーイズたち。そこには、まぎれもなく涼が立っていた!
しかし、その様子は明らかに憔悴しきり、声を震わせて言う。
「そいつは俺たちの手には負えない。化け物だ!」
果たして、勝負の行方は?
涼が帰って来た理由は?
ビューティ★ボーイズたちは、本当にこのまま解散してしまうのか・・・・・・・・・