Interview

特別企画「ジャンプSQ.」誌面連動!
ミュージカル『憂国のモリアーティ』W主演スペシャル対談

ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ 役 / 鈴木勝吾
シャーロック・ホームズ 役 / 平野良

謎を前にすると真逆なタイプのふたり……?

ミュージカル『憂国のモリアーティ』W主演スペシャル対談

──原作を読んだ感想はいかがでしたか?

鈴木 面白かったですね。作画もテーマも含めてすごく魅力的な作品だと感じました。それに僕、元々原案の『シャーロック・ホームズ』シリーズのような世界観が大好きなんですよね。しかも本作はシャーロックではなくモリアーティを主人公にしているので、そこも新鮮でした。モリアーティがこんなにスタイリッシュに描かれている作品は、今まで見たことがなかったですね。
平野 大体おじいさんくらいの歳が多いもんね(笑)。勝吾くんが言ったように、モリアーティ側の視点で見せるところがすごく面白いなと思いました。元になっている『シャーロック・ホームズ』シリーズをミステリー小説だとすると、『憂国のモリアーティ』はモリアーティ視点にすることで、プラス階級制度やそうした社会・時代に抗う市民を描いていますよね。そういった時代背景やヒューマンドラマ要素が加わっているところに、より魅力を感じました。

──特に好きなキャラクターは誰でしょう?

鈴木 もちろんウィリアムですよ!(笑) ただ、原作を読むと「やっぱりシャーロックいいなぁ……!」と思いますね。シンプルな憧れがあるんです。僕、探偵が大好きで。
平野 そうそう! 勝吾くん、ドラマとかを観ていても、すぐに犯人が分かっちゃうんですって。
鈴木 そうなんです。昔は「探偵になりたい!」って言ってたんですよ。でも歳を重ねるにつれて、実際の探偵は『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』のように謎を解いたりするわけじゃなく、地道に写真を撮って浮気調査をしたりするんだ……と知り、それはちょっと違うなと。でも本作のように、事件が起きてそこに呼ばれて謎を解決する……という探偵にはすごく憧れます。超カッコいいじゃないですか?
平野 うんうん。
鈴木 児童文学で小説を読み始めた頃から推理モノが好きだったんです。今でもミステリージャンルのドラマや映画は好きですね。

──しかも真犯人が分かってしまう、と。

鈴木 分かっちゃいますね。
平野 すごいよねぇ!
鈴木 でも最近は、特に日本の作品だと、まずキャスティングの段階で犯人が分かってしまうじゃないですか?(笑) そこでさらにその裏をかいて……という作りになってきている。そうなると単純な物語の推理とはまた違う推理が入ってくるので、純粋には楽しめなくなってきてしまって。だから小説や、海外作品のほうが“推理を楽しむ”という点では面白いかもしれません。でも結局はミステリーモノってエンターテインメントですから、自分の推理が当たっていようが外れていようが楽しいんですけどね。
平野 物語を読んだり観たりしながら、推理もできる脳みそがスゴイ。僕はごく一般的な観客タイプなので、ラストは普通にビックリしてしまうんです。映画館で『グランド・イリュージョン』を観たときも、「えええ~っ!?」って言ってしまったし(笑)。
鈴木 めちゃめちゃいいお客さんですね(笑)。
平野 ほんと全然分からないんだよ、最後の最後まで。以前、謎解きモノの舞台(『名探偵コナン×ライブミステリー洋上の迷宮』)に出演したことがあったんですね。前半が舞台形式でミステリーを展開させて、幕間の30分休憩中、お客さんは答案用紙に解答を記入するんです。そこから後半の舞台でその答え合わせをする……といった構成で、8割くらいの方が正解するんですよ。でも僕、一番最初に稽古場で同じことをやったとき、シナリオを全部読んでいるはずなのに全然正解できなくて!
一同 (笑)。
平野 ほんとに謎が解けないんですよね……。だからそういう脳みそが鍛えられている人はすごいなって思います。

──謎を前にすると、おふたりは真逆なタイプなんですね。

平野 そうだと思います。
鈴木 じゃあ良くん、シャーロックじゃなくてモリアーティやります? 僕が謎を解くんで(笑)。
平野 逆でも面白そうだよね(笑)。でもこの作品のモリアーティって、ミステリー要素を引っ張る役目を担ってるじゃない? しかも知恵は互角だけどホームズのことを掌握していて、モリアーティのほうが一枚上手、みたいな。そこが読んでて面白いな~!と思ったんですよね。『シャーロック・ホームズ』シリーズでモリアーティが一枚上手だったのは、こういうことだったんだ!という新たな解釈ができました。それもあってウィリアムはすごくカッコいいな!と感じますね。
鈴木 じゃあ3公演くらい、逆でやってみて(笑)。
平野 そうしてみよっか(笑)。

「勝吾くんは通知表が全部Aって感じ」
「良くんは突くところがない役者さんです」

ミュージカル『憂国のモリアーティ』W主演スペシャル対談

──キャラクターの魅力を引き出すために、お芝居で大切にしようと考えていることはありますか?

鈴木 本作で言えば、英国貴族の所作などは稽古で体得していかなければいけないところではありますが、そうした所作ってそれが身に付いた原点があると思うんです。その人の所作や言葉遣いって、何かしらの要因があって構築されるものなので。つまり、その人の核となるプライドや信念をしっかり作ることができれば、必然的に芝居もそこから派生して生まれていくものだと思います。後は、この作品のように原作で描かれているビジュアルや舞台となる当時の時代背景、その人自身の生き方によって、歩き方や話し方、所作も生まれてきますし。そのキャラクターがどう生まれてどう育って……そういうところをハッキリさせていくと、自然と芝居という肉体的な表現に繋がっていきます。今回ウィリアムの場合はそこが丁寧に描かれているので、それをひとつひとつ演じていけば、自然と彼としての動きになっていくかなと考えています。
平野 僕はさっきも言った快活児っぽいところと本来持っている心を病んでいるところ、その両極端な振り幅を大切にしたいです。それプラス、彼は謎解きに必要とあればあらゆる技術をマスターしようとする人だとも思うので、当たり前のようにいろんなことをこなす多彩さも出せれば面白いかなと。後は喋るときも相手に何かしら探りを入れてみたり。謎解きが苦手な僕が観たら分からないでしょうけど(笑)、ミステリー好きな人が観たら「何か聞き出そうとしているな」と感じさせる表現ができたらいいですね。

──同じようにウィリアムにも相手を探るようなところがありますよね。

平野 確かに、ウィリアムのほうがその部分は強いかもしれないよね。何考えてるか分からないときがあるもん。
鈴木 ソウデスネ……(取材陣をじっと見つめる)……今それを実践してみようかと思って。
一同 (笑)。

──役者としてのお互いの印象を教えてください。

平野 舞台でガッツリ共演するのは今回が初めてだよね。
鈴木 はい。仕事現場で会ったり、ニアミスしたりは今までもあったんです。名前はもちろん、あの作品に出ているなとかも知っているし、たまに会うと「あ、良くん!」「勝吾くん!」って呼び合う仲なんですよ。それなのに、一度もしっかり絡んだことはなかったんですよね。だから共演できて嬉しいです。
平野 僕も共演してみたいなと思う役者の方のひとりだったので、ようやく一緒にやれるんだと楽しみな気持ちが大きいです。それで勝吾くんの印象はね? 小学校の通知表でいうと、全部Aですって感じ。
鈴木 ……僕、全部Aでした(笑)。
平野 ほら~! やっぱりそうなんだよ、そんな感じがすんのよ!(笑) 僕は社会がBとかCだったり、すごくまばらなタイプ。役者としても、好きなことは好きだけど、ダメなところはダメで。でも勝吾くんは、人としても役者としても何でもできる印象があります。
鈴木 いや、僕役者としては凸凹もいいところですよ!?(笑)
平野 パラメーターが整っているというか、土台がしっかりしてる。安定感があるんですよね。セリフも聞き取りやすいし、声質もいいし、歌も高音もいいしね。人前に出る時までにそのレベルにすべて持っていっているんだとしたら、ものすごくストイックな人なのかもしれませんし。それはこれから一緒に稽古していくなかで見えてくると思います。とにかく、今のところはそんな印象ですね。
鈴木 共演経験のない役者さんのことを言うってなかなか難しい!(笑) でも僕たち、近しいところがあると思いますよ。観劇に行くと、知ってる役者知らない役者に限らず、この人めちゃくちゃすごいけどここはこうなんだろうな……と分かる部分があるんですよね。それが良くんの場合、もちろんすべての作品を拝見しているわけではないですが、すごくしっかり役作りをされてるなという印象で。そこが役者にとって一番大切な部分だと思うんですけど。それに舞台って、技術のあるなしが見えてしまいがちですが、良くんに関してはもう突くところないよね?という印象なんです。だからとにかく芝居で絡んでみたいんですよね。
平野 確かに。
鈴木 稽古の段階でどう作っていったのかも興味はあるけど、それ以上にやっぱり僕は役者なので、対峙している人が何を思って芝居してるんだろうということを一番知りたい。だから印象がどうかというよりも、今良くんに興味しかないです(笑)。絶対上手いのは分かってますから、一緒にやったら楽しいんだろうなって期待ばかりですね!
平野 ほんとに稽古が楽しみだね!

『憂国のモリアーティ』はミュージカルこそピッタリの作品です!!

ミュージカル『憂国のモリアーティ』W主演スペシャル対談

──本作は生演奏であることも注目ポイントのひとつです。まずおふたりは、これまでにそういった形式の舞台出演はありましたか?

平野 何度かありますね。ピアノだけのものや、5~6楽器編成みたいな形式でした。
鈴木 僕はミュージカルのコンサートやアーティスト的なライブでは何度か経験がありますが、生演奏一本で2~3時間役を背負うというのは今回が初めてです。でもミュージカルコンサートなんかは稽古期間が1日程度というとんでもないスケジュールなので(笑)、それを考えると生演奏の舞台を1カ月近くかけて作って挑めるというのは、これまた成長できる機会をいただいたなと感じています。また一つ自分の糧にして登れる作品になるだろうし、それを作品にも還元していきたいです。怖さもありますが、トライする意味があるなと思っています。

──では歌、ピアノ、ヴァイオリン、3つのセッションで贈る本作への意気込みを聞かせてください。

鈴木 何やらストレートプレイ版もあるらしいと伺っているのですが(笑)、僕自身は『憂国のモリアーティ』はミュージカルでこそ映える作品だなと感じています。ミュージカルであればこの世界観を一発で表現できますし、各キャラクターが内に抱えているものも、自分の心情を歌うミュージカルならば音で物語を進めていける。ストレートプレイは語らない言葉の美しさや空気感が魅力ですが、“その人が抱えている何か”を表現するにあたって、ミュージカルはものすごく適しているはずです。だからもう、期待しかないですね。
平野 あはははは! すごい燃えてるじゃん!(笑)

──おふたりのミュージカル版で『憂国のモリアーティ』プロジェクトの先陣を切って、盛り上げていくということですね。

鈴木 はい。何事もフロンティアとは素晴らしいものですから。みなさんも期待を寄せてくださっていると思いますが、何より僕自身が一番ミュージカルでやることを楽しみにしています。この作品は絶対音で魅せる手法が合うと思うので!
平野 例えば「いつの時代に誰と何の景色を見て美しく思った」という文章があったとしたら、僕は音楽だけでそれを表現することができると思っています。その点、この『憂国のモリアーティ』という作品は、階級制度に抗う激しい情念だったり、それぞれの葛藤だったり、痛みだったり……という要素が多く、音楽を通してそれらを観せていくほうがより近い気がするんです。言葉じゃないけどでも分かる!みたいな形容しがたい柔らかな心を、音楽だったら表現することができる。また生演奏ということで、僕ら役者陣とピアノ、ヴァイオリン演者の方との心の交わりが、公演を追うごとにより精錬されていくはずです。同じ曲でもライブで聴くとまた違うものですし、それを生演奏でお届けするならば、みなさんの心にガツンと響くものになると思います。逆に言うとこここそが本作のコアであり、これがダメだとすべてがダメになってしまうので、全員でしっかり頑張っていきたいです。

──最後に公演を楽しみにされているファンの方、また本作が気になっている方々へ一言メッセージをお願いします!

鈴木 原作ファンの方のなかには舞台を観たことがない方も多いと思いますが、漫画で描かれている『憂国のモリアーティ』の世界が、ミュージカルという表現をとることでさらに豊かになるところを観ていただきたいと、強く思っています。ですから、原作ファンの方にはもれなく足を運んでいただきたいです。みなさんに応援していただいて、原作とともにこのミュージカル『憂国のモリアーティ』もこの先まだまだ歩んでいける作品にしていけたら嬉しいです。最高の時間をプレゼントしますので、どうぞご期待ください。
平野 ミュージカルが好きな方、2.5次元が好きな方、『シャーロック・ホームズ』が好きな方……と、この作品はすごく間口が広くて、いろんな角度から楽しめると思っています。何より今回はミュージカルということで、ミュージカルの良さ、劇場で生で観る良さというのをしっかりお伝えしたいです。漫画の絵や活字で読んでいた物語が、今目の前で人が動いてみせるライブだとこうなるんだ!という面白さがありますので、皆様ぜひぜひ劇場へ遊びにきてくださいね。

ミュージカル『憂国のモリアーティ』W主演スペシャル対談