原作・監修を手掛ける赤川次郎先生×赤川次郎作品の開発を手掛ける金沢十三男
第1弾 DSと「月の光」-2

『赤川次郎ミステリー 月の光 —沈める鐘の殺人—』発売決定記念、「スペシャル対談」が実現!
その模様を3回にわたってお届けします。※今回は2回目です。

—他にもゲーム化された当時のエピソードはありますでしょうか。

金沢 基本的には、赤川さんからここをもっとこうしてほしい、という要望を言われた記憶はなくて。でも「魔女たちの眠り」の時に「登場人物のキャラクターは大事にしてください」と言われました。ですので、そこはシリーズ通して気をつけています。ただ、ゲームではプレイヤーが主人公になるので主人公の名前だけは変更できるようにしたいとお願いしました。始めに赤川さんのお宅にゲーム機を持っていって、テレビに繋いで『ゲームってこういうものです』という説明からはじめましたね。

赤川 全然知らなかったですからね。

—ご覧になっていかがでした。

赤川 こういうものなのかと(笑)

—普段小説を書かれていると、ゲームはなかなかできないですか。

赤川 ゲームが好きな作家さんもいらっしゃいますが、ゲームをやりはじめると原稿書く暇がなくなりそうで(笑)
全部やったらすごい時間かかりそうですもんね。

—そうですよね。また、男女が選べるあたりも何かこだわりがあるのですか。

金沢 「魔女」のときは男主人公だけで作ったのですが、女性ユーザーが意外と多くて、アンケート葉書に「女性主人公のゲームを作ってください」という声をたくさんいただいたんです。そこで、主人公の性別が男女選べる形にしました。自分と主人公の性別が同じの方が、より物語に入り込みやすいのは容易に理解できましたので。でもシナリオも男女別々に用意することになるので、開発はその分大変になりましたが(笑)

—「月の光」は原作では女性が主人公ですよね。男性主人公で進めると話が変わる部分もあるのですか。

金沢 多少変わる部分もありますが、大幅に変わるとプレイヤーが2回プレイしなければならないシステムと勘違いしてしまいますから。ですので、やはり基本的にはどちらでやっても大筋は変わらないようにしました。

—他にゲーム化する際にこだわった部分はありますか。

金沢 やはり原作を読んでからゲームをプレイする方もいると思うので、原作を活かしつつ、ゲームならではの面白さを追求できるようなつくりにしたかったんですね。その一つが「続編シナリオシステム」だったり「学園七不思議」だったりするのですが。
また、ゲームを進めていくと、隠しシナリオがどんどん出てきます。制作当初、本当は基本の物語が1話だけあって、そのほかの話は全部隠しておこうかな、とも思ったのですが、色んな人に反対されました(笑)
そして、僕はどうしてもアドベンチャーゲームが好きなので、どうしてもじっくり遊んで解いていってもらいたいということで、比較的難しくしてしまう傾向があるのですが、今はそういう時代でもないですし、それは今回、中野Pが上手くバランス調整してくれたので非常に遊びやすくなっていると思います。

—誰でもプレイできて、物語がちゃんと楽しめる、という内容になっているということですね。
話は変わりますが、このパッケージにもあるように、『紅葉』は重要なキーワードになっているのですか?


金沢 原作のモチーフでもありますし、グラフィックで始めに作っていったのが紅葉林だったんですよね。それもただ同じ色を重ねるときれいに見えないので、色々な色や形を使ってつくり、また上からや下からなど角度によっても見え方が変わってくるので。そうやって細かいところまで作り込むことによって、「紅葉」は綺麗に表現したいなと当初から思っていました。

赤川 日本の「紅葉」は非常に変化がありますよね。外国のだとただ真っ赤一色だけだったりする。それだとそのうち見飽きてしまう。日本のは黄色だったり赤だったりカラフルですからね。それを再現するのは大変だと思いますけど。

—紅葉以外にも池とか鐘楼とか、原作をどうやって表現するかという葛藤はありましたか。

金沢 ここに池があって何があって、という原作を見ながら地図を書いていく作業は意外と夢があって楽しいんですよ。けれど地図を作って、その後にシナリオが乗っかった時にだんだん不都合がでてくる。走って教室に逃げたいのに、教室が隣だと近すぎるな、とか(笑)
そこのシナリオをどう変えるか、というのを合わせていくのが大変でしたね。

赤川 あまり深く考えず漠然と書いているので(笑)
映像化するときは大変だと思いますけどね。人物関係の設定から入っていくところが多いので、舞台は物語の展開にあわせて考えていくことが多いですね。やはり人物の設定がどんどん変わっていくと、舞台もそれに合わせてどんどんかわっていっちゃう(笑)
こんなはずではなかったのに、という部分はありますね。
まだ絵に描けるところはいいけれども実写にしようと思うとなおさら大変ですよね。こんな所、どこ探してもないでしょ、という。ミステリーって想像力で作り上げるところがあるでしょう。

—そうですね。月の光に出てくる、鐘楼などが実際に絵になっているのを見てどう思われました?

赤川 イメージどおりにえがいていただいているな、と思いました。
ヨーロッパ的な雰囲気がとても出ていますね。