自然に受け入れてもらえるUIを目指して
UIデザインに目覚めたきっかけ
UIデザインの「UI」とはユーザーインターフェースの略で、ユーザーとゲームの接点となる部分をデザインするのが主な仕事です。
大学ではウェブサイトのデザインや3DCGを学んでいたので、それを活かせる仕事先をと考えたときに、いろいろなことができそうなゲーム業界を選びました。前職ではスマートフォン向けゲームのUIデザインを担当していましたが、ゲームの進行に大きく関わるUIの楽しさに目覚めてしまった感じです。スマートフォンの小さな画面内で、「どこにボタンを配置すれば遊びやすいのか」などを考えながらUIをデザインしていました。
憧れたコンシューマ開発
とはいえ、小さい頃からゲームボーイカラーなどでRPGやアクションゲームなどをプレイしていたこともあり、「いつかはコンシューマゲームをつくってみたい!」との思いから、3年前にマーベラスに転職しました。今でもゲームは好きで、プライベートでもよくプレイしています。ここ数年ハマっているのはホラーゲームです。コンシューマゲームでも、他のプレーヤーとコミュニケーションをとれるマルチプレイが可能なゲームが好きですね。
開発環境もオンラインからコンシューマになったことで大きく変わりました。オンラインではUnityを使っていましたが、現在のメインツールはUnreal Engineです。最初は少し戸惑いもありましたが、まわりの方に教えてもらいながら仕事を進めていくうちに、自然と身につきました。もともとソフトを数多く使ってきた経験があったのも良かったのかもしれません。どんなジャンルのものでも「新しいソフトを使うのが楽しい」と思ってしまう性分なので、Unreal Engineもはじめて使う不安よりも、楽しさが勝っていたという感じです(笑)。MayaやPremiereなども触っているだけで楽しいですね。
ユーザーを楽しませるUIって何だろう?
Unreal Engineを使った初仕事は『DAEMON X MACHINA』で、ベータ版からUIデザインに携わりました。アーセナル(メカ)を自分の好みにカスタマイズする場面があるのですが、多くの情報を盛り込みつつ、ユーザーさんが迷ってしまわないように心がけました。
カスタムパーツを機体に装着した前後では、性能がどう変化したのか? アーセナルの外見はどう変わるのか? ユーザーさんにカスタマイズ作業そのものを楽しんでもらえるようなUIデザインを考えた結果、作業画面のバックにアーセナルを配置し、どこが変わったのかを視覚的に楽しめるようなUIにたどり着きました。さらにプランナーさんとも相談して、カスタムパーツの操作画面でカスタマイズ後の機体を装備して、機体性能の変化を実際に試せるようにしました。
手ごたえを感じた瞬間
また『DAEMON X MACHINA』では、「ユーザーさんに響くものがつくれた」と実感した忘れられない瞬間がありました。あるシーンで、視覚的にわかりやすくするためにデザインした小物のアイコンがあるのですが、このUIはアートディレクターさんと話し合ってゲームの設定にまで踏み込んだものでした。
ゲーム発売後しばらくして、たまたまツイッターで見つけたのですが、ユーザーさんがこのアイコンをモチーフにしたオリジナルのキーホルダーをつくってくれて、その画像を上げてくれていたのです。試行錯誤を重ねた思い入れのあるアイコンだったので、UIデザイナーとしての手ごたえを感じられて、本当にうれしかったです。
ユーザー層を意識しながら開発
UI制作にあたって、ユーザー層がどこなのかはすごく意識します。漢字は少なめがいいのか? 文字を大きくするのか? 文字にふりがなをつけるのか?その場合、テキストが長くなるのでテキスト自体を減らしたほうがいいか? さらに、全体のデザインを考える上で、多言語対応したときの見え方も意識します。日本語を入れていたスペースより、言語によってはさらにスペースが必要になりますから。
パッと見て情報が直感的に伝わるように、UIデザインではアイコンを多め、文字は少なめを基本にしています。そこで足らない部分は、先ほど例に挙げたアイコンのような小物などの演出で埋めていく、といった場合もあります。小物をデザインするときには、他のゲームはもちろんのこと、映画やアニメからもヒントを得ることが多いので、普段からいろいろ見るように心がけてます。
さらにその先のUIへ
UIデザインで心がけているのは、「プレイの邪魔にならない」ようにすることです。ゲームの流れを遮ることなく、ユーザーさんにスッと自然に受け入れてもらえるUIというのが大事だと考えています。
その一方で、“見るだけで楽しい気持ちになるUI”にも憧れます。ユーザーがストレスなく使えるのはもちろん、さらにその世界観にマッチした遊び心のあるUIは、ゲームの楽しさをさらに引き立ててくれると思うからです。ゲームの世界観をUIでどう表現するか──難しいテーマですが、非常にやりがいを感じています。