ショートストーリー

劇場版墓守超人グレイブバーン大予告編

『劇場版墓守超人グレイブバーン大予告編』

速  報!

ぼくらのグレイブバーンが帰ってくる!
地球侵略を企む暗黒ヒモ宇宙軍団が去り、ふたたび訪れた平和な時間。

だが、穏やかな日々はそう長くは続かなかった――

「クックック……我が名は宇宙皇帝ハゲール。暗黒ヒモ宇宙軍団なんぞ、我が先兵にすぎぬわ。
 これより我らの本当の力を見せてやろう」

突如、空を覆うUFOの大群!
そして世界中の電波をジャックして流された宇宙皇帝ハゲールの宣戦布告!
日本は……いや! 地球はどうなってしまうのか!

「なんてこった! ヤツらには俺たちの武器が効かないってのか!」

「オーマイガッ!
 グランドキャニオンがばあちゃんのオートミールみたいになっちまいやがった!」

「チクショウ! 地球はもうおしまいなのか!」

「パパぁ、ママぁ……」

「おお、わたしのかわいい坊や、泣かないで……」

「こんな時、カレがいてくれたら……」

「そうだ、カレならきっと……!」

人々が口々にカレの名を叫んだ。

「グレイブバーン」

「グレイブバーン」

「グレイブバーン」

「「グレイブバーン!」」

それはまさに平和への祈り!

地球を救うヒーローへの切望!

自由への渇望!

そんなか弱き者たちの言葉に応えずなんとする!

骨は折っても心は折れぬ

見えは切っても友情は切らぬ

墓守超人グレイブバーン!

この夏、スクリーンで再び会える!

「みんな、映画館でオレと握手だ!」


墓守超人グレイブバーン

テレビ画面の中でやけに毒々しいマスクをかぶった男が熱いセリフを放つ。
子供の頃に録画してからもう何度見たかわからない。
おかげでカビ臭いビデオデッキから磁気テープがキュルキュルと
今にも千切れそうな音を立てている。

だって仕方ないだろう?

この『墓守超人グレイブバーン 夏休みこども映画まつりスペシャル』の番宣映像は、今や
ヌーチューブはおろか、どのメディアにも収録されていない幻の映像なんだから。
この番宣にだけ幻のマスク(実際には映画に登場しなかった)
グレイブバーン・ドラゴンモードが登場しているのだから、ファンとしては
ビデオテープがすり切れるまで見てしまうのは当然のことだ。

ところが、だ。
俺がいくら説明してもこの激レア映像のありがたみをまったくもって理解しない
ポンコツが一人……いや、一体? それとも一つ?

まあ、どっちでもいいか。

とにかく、そいつは今もポンコツ顔でポンコツ目ん玉をしぱしぱさせて
「ほえ~」などと口からポンコツ音を発している。

まさにザ・ポンコツ。

「それじゃあマスター、つまりこのハゲールさんという人が次の敵なわけですね」

「そういうことだ。暗黒ヒモ宇宙軍団は謎の組織だったが、実は母星のクーデターに
 失敗しこの皇帝ハゲールに追放された者たちだということがわかるわけだ。
 暗黒ヒモ宇宙軍団もまた圧政に苦しむ民衆を救うため戦った正義の軍団だった。
 しかし、故郷を追われ新天地を求めたがゆえに自らがかつての圧政者と同じに
 なってしまったという実に奥深いテーマが込められているのがこの劇場版なんだ!」

「ほえ~」

くそっ、コイツちっともわかってねぇな。

俺をリア充へと更生させるため、ヘンテコなメガネと一緒に送られてきた
この『シル』とかいうナビゲーションAIはスマホの画面いっぱいに
またポンコツ顔をさらしいる。

つーか、なにが超高性能なAIだ。
こんなヤツはこうしてやる。

「んまっ! ちょっとスマホの画面を無闇にスワイプしないでくださいよっ、次の画面に
 飛び移るのけっこう大変なんですからっ」

飛び移るんだ……そこはデータなんだからパッと移れよ。

「わざわざおまえに買ったばかりのBD-BOXをオールナイトで見せてやっただろうが。
 それでどうしてコッセツマン……もとい、グレイブバーンの設定を理解していない!?」

「えーと……途中から寝てました」

「寝るなよ! AIだろオマエ!」

コッセツマンのBD-BOXを前にして居眠りとかマジありえねぇ。

「そもそも、なんでこの人はマスクをかぶって戦ってるんですか?」

「そこからかよ! だから、先祖も実は宇宙人でこのマスクには先祖から
 受け継いだ宇宙的パワーが秘められているんだよ!
 そしたら地球を守るために戦うだろ!? たった一人でも! 男の子なら!」

「それだけ強いなら、いっそ地球を侵略してしまえばよかったのに、そのご先祖様も」

「ひでぇこと言うなオイ!?」

ダメだこいつ。
まったくもって正義の心とか持ち合せてねぇ。
だってマシーンだから、ロボ……じゃなくてAIだから。

「よーし、わかった。こうなったらもう一回、第一話から見直すぞ。
 ていうかコッセツマンの良さがわかるまで何度でも、だ!」

「えー、それよりこの『バトル公女星羅』とかいうヤツ見ましょうよ。
 これ女の子が主人公じゃないですか」

「おお、『星羅』か。それも実に名作だぞ! 序盤の公爵家のお取りつぶしで
 ひとりぼっちになった星羅へのひどいイジメ描写で脱落するヤツが多いんだが、伝説の
 格闘貴族と出会い弟子入りしてからが本番だ。
 厳しい修行を経て会得した覇王撃滅拳で自分をイジメた貴族の令嬢たちを
 バッタバッタとやっつけていくところは爽快感抜群だぞ。具体的に言うと第八話からだな」

「……やっぱいいです。他の見ましょう」

「なんでだよ!? おもしろいってば!」

ポンコツAIにもコッセツマンの良さを教えよう計画……
どうやら思っていたよりずっと困難な道のりらしい。


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テーマソング「墓守超人グレイブバーン」
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