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赤川次郎スペシャル対談-1

【赤川次郎ミステリー 夜想曲 —本に招かれた殺人—】
祝・発売記念!
赤川次郎(原作・監修)×金沢十三男(本作エグゼクティブプロデュサー)
スペシャルロング対談

【第1回目】
赤川次郎氏がDS版「夜想曲」を初体験!
「夜想曲」誕生秘話を語る!!

 ——DSで初めて『夜想曲』をプレイされてみての感想をお願いいたします。

赤川 次々にページがめくれていく感じが快感ですね。あのようなスピード感というのは速すぎてもいけないし遅すぎてもいけないしという微妙なタイミングがあると思います。


DSを体験する赤川次郎氏

 ——自分のタッチするスピードに合わせて進んでいくので、自分のペースで進められるんですよね。

赤川 そうですね。

 ——金沢さんにお伺いしたいのですが、ゲーム化する際にこだわった部分とお薦めの部分を教えてください。

金沢 一番こだわった部分は「プレイヤーが物語の主人公になれること」ですね。主人公を自分の名前にして遊べる点もそのひとつなのですが、他キャラクターとの会話の中で、自分の名前がゲーム内で呼ばれるように文章を作っていきました。あとはやはり女性のファンが赤川さんには多いので、女性主人公でもゲームができるシステムに絶対しよう、というところから『夜想曲』の開発を始めました。前作の『魔女たちの眠り』は実はそれができないんですよ。前作で女性の比率がかなり多いことが分かったので、この点にこだわって企画を進めました。

 ——赤川先生にはベストセラーがたくさんある中で、なぜこの『殺人を呼んだ本』を選ばれたのでしょうか。

金沢 1作目の原作『魔女たちのたそがれ』『長い眠り』はホラーだったんですね。ホラーは基本的に巻き込まれる展開になりますので、次回作はもう少しプレイヤーが能動的に動けるようなものができないか、と思っていたんですよ。その時点で候補にしていたのは『忘れな草』という、森の奥深い村で起こる、少しファンタジックな面がある物語で、やはりホラーでした。それを原作にゲーム化を進めていたのですが、どうしてもしっくりこない部分が自分の中であったので、開発チームに『忘れな草』を元に企画を進めさせる一方で、他の本を探してまた本屋に通って、赤川さんの本を漁っていたんですね。そしたらあるとき、新刊がちょうど出ていて、それがその『殺人を呼んだ本』だったんですが、最初の数ページを読んだだけで「見つけた!」と思ったんですね。短編5つで構成されているという構成も続編システムに合いますし、でもそれ以上に惹きこまれたのは、その設定ですよね。謎の人物が建てた森の中の図書館、地下に集められた本たちは、全て殺人や死に関わってきたものばかり。そして、本を開く度に、その本にまつわる事件が起こる・・・。この設定が、非常にミステリーホラーとしてバランスが良かったんですよね。すでにこれは読者というよりも、作り手としての思いなんですけれども。
男女ふたりの大学生が主人公なのですが、彼らのキャラクターがすごく強くて、彼らが自由に物語をかき回しているというか。それも非常に面白かったので、読者がそのキャラクター自身になれたら面白いだろうと思ったのがきっかけですね。



 ——先生には実際に今主人公としてプレイしてもらいましたけれども、どうでしょう?やっぱり小説とは違う印象はありましたか?

赤川 やはり次どうなるのだろうという、自分の原作に言うのも変ですけれども(笑)。そういう楽しみがありますね。

 ——またやってみたいな、先をやりたいな、という思いもありますか?

赤川 締め切りさえなければ(笑)。あとはやはり具体的に場所の絵が出てくるところがあって、物語に入りやすいということがあって先をやりたくなる、というのはあるかもしれませんね。。



 ——小説に慣れてない人でも音楽があったり実際に絵があったりという部分で、かなり自分たちの生活に近い部分があるゲームですよね。

赤川 逆に映画とかテレビとは違って、人任せにするのではなくて自分で進んで行くという楽しみがあるような気がしますね。

 ——ただ見るだけ、耳から入ってくるだけではなく、自分で操作するということですね。先生も先ほどタッチペンで遊んでらっしゃいましたが、やはり小説とは違いますか。

赤川 そうですね。選択肢を選べるという部分もあるのでそこは小説とは大きく違いますよね。

金沢 ゲームと小説の融合なので、最終的には遊ぶ人の想像力と意思に頼りたいんですよね。

赤川 そうですね。

金沢 音を聞いたり、映像も出てきますが、物語をどう読んで、どう動かしていくのかは、プレーヤー自身なんですよね。



 ——小説と同じで想像力を働かせる余地を残しつつもゲームであるという。そこがこのゲームの新しいところですよね。

 ——お二人にお聞きしたいのですが、ゲーム化された当時の思い出深いエピソードがもしあればお聞かせください。

金沢 何だろうな。僕はですね、赤川さんの大ファンだったので、初めて何かの取材で赤川さんと一緒に写真を撮る機会があって、個人的にそれが一番うれしかったです。

赤川 (笑)。

 ——ゲームを作られた後ですか。

金沢 作った後ですね。今でもその雑誌、大事に取ってありますけど。

赤川 (笑)。そうですか。

 ——赤川先生は何かありますか。ゲーム化に際してお二人の間で何かエピソードは。

赤川 最初のゲームのお話があった際に、一度お断りをしたのですが、すごく長い手紙をいただいて、ともかくその手紙が本当に熱心で作品を愛して大好きなんだということが伝わってきて、それはとても珍しいことなんでね。やっぱり普通はある程度ビジネスの仕事は、やり取りのみじゃないですか。それがビジネスの範囲を超えて半分ファンレターのようでしたから。好きだからやりたいんだというのが、強く伝わってきて、それがとても印象的でした。

金沢 お断りの返事をファンレターの返事みたいに受け取っちゃって。「返事がきた!」って。

赤川 (笑)。ファンレターにお返事を出す暇はなかなかないものですから。

 ——いわゆる巨匠と言われる方から手紙が来たことは、ファンだったらなおさら嬉しいですよね。

金沢 そういう気持ちや雰囲気は、なるべく出さないようにしてたんですけど。

 ——にじみ出るものがあったんでしょうね。

金沢 一緒にお仕事させて頂くことになって、僕は赤川さんからサインをもらわないって心に決めたんですよ。なので、お会いしてから一度も頂いてません。

 ——そこはファンとの線引きなんですね。

金沢 ファンのままでは仕事ができませんので(笑)。

〜第2回へつづく